海外で研究職を探す:ポスドクアプライ編

Summary 立志編につづく、海外ポスドクポジションへの応募に関する記事。フェローシップと通常の募集へ応募したときの経験を書いていきたい。 応募先の探し方 海外での研究場所を探す場合、日本人は海外学振制度を利用していく場合が多いだろう。しかし、これはそれなりに競争率が高いので、これだけでは実現できないことも多い。そこで、海外学振への応募に加え、雇われポスドク(PIのもつグラントで雇ってもらう)のクチでもポジションを探すことにした。  上記二つのアプローチでは、とるべき行動が大きく異なっていた。フェローシップの受け入れ先探しでは、自分が働きたいと思うラボのPIと国際学会などで話し、面識を作っておくことが大事だろう。私の場合、かねてより論文を読んでいた研究グループのPIが招待講演でたまたま来日する機会があり、その際に面識を作ることができた。いったん面識ができ、かつ人格的に問題がないことがわかれば、(よっぽど変なことをしない限り)受け入れを断られることはまずないだろう。なぜなら、予算として一番かさむのは人件費なので、その部分を持ってきてくれるポスドクは居て得はあっても損はないからだ。もし学振DCなどの予算を持っている人であれば、将来受け入れ先になってくれそうなPIに自分から連絡し、博士課程在学中に短期滞在などをしておくのもいいのだろう。  一方、雇われポスドクのクチを探す場合は、自分で積極的にポスティングを探す必要があった。私が北海道大学でポスドクをしていたころ、スペインから着任した新しい助教の方がおり、彼がいろいろアドバイスをくれた。その時の情報を整理すると、生態学分野では概ね以下の三つの情報ソースがあると思われる。(1)ECOLOG:アメリカ生態学会のML。メールがアーカイブされているので、過去にさかのぼって探すことができる。時期を問わず、ポスドクの募集が行きかっているので、ここは随時チェックしたほうがいい(のちのエントリーで書く予定のテニュアトラックポジションの募集も多い)。(2)学会のJOB BOARD:大体の学会では、公募に関する情報を載せる掲示板が用意されている。自分の分野に近い学会であれば、興味にあうポジションも探しやすい。(3)個人のツテ:個人のツテを通じて回ってくることも多い。ただし、これはすでに海外とのコネが強い人に限られる術だろう。 応募書類の準備 雇われポスドクのポジションを探す場合、応募先にあたりをつけて応募するぞ!となるのだが、ここでもう一度壁にあたった。募集要項を見ると、CV(履歴書)、Cover Letter、References(推薦者)の提出が求められる。CVとReferencesはまだいい。しかしCover Letterには何を書けばいいのか皆目見当がつかない。  Google大先生に聞くと、実は結構な量のカバーレターの例が出てくる(cover letter, postdoc, example, ecologyなどでググる)。例を見ていくと、多くのものは以下のポイントを押さえているようだ。(1)まず自己紹介し、アプライ先の研究プロジェクトに興味があること、自分の能力がマッチしていることを端的に記す。(2)つづいて、なぜ自分がマッチしているのかを、スキルや経験を上げながら具体的に説明する。この際、これらのスキルを得た経緯(博士課程の中で、ポスドクの中で、TAをしながら、などなど)に触れておくと自然に見える。(3)最後に、チームワーク力にも言及しておくとなおよいようだ。  以下に、実際に自分のつかったカバーレターを例として置いておこうと思う。 Dear Prof. XXX I saw an advertisement of postdoctoral position at your laboratory on ECOLOG-L, and I wish to apply for the postdoctoral position. I have been trained as a freshwater ecologist, but I am very interested in … Continue reading 海外で研究職を探す:ポスドクアプライ編

海外で研究職を探す:立志編

Summary 2019年、アメリカで運よくテニュアトラックポジションのオファーをいただくことができ、8月からノースカロライナで研究室を立ち上げることになった。日本で学位をとった私にとって不可能と思えることばかりだったが、気が付いたら何とかなっていた。記憶が褪せる前に、その過程を記事として残しておこうと思う。この記事は「立志編」ということで、海外にでようと思ったキッカケを中心に書いていきたい。 初めての国際学会@にゅーじーらんど 海外に出てみたい、という気持ちが確かに芽生えたのは、2011年に初めて参加した国際学会の時だと思う。この時、私は博士課程1年だったが、国内の研究の世界しか知らなかった私にとって衝撃的な体験だった。  その国際学会はSociety for Conservation Biologyの年会で、世界各国から保全生態学の第一線で活躍している研究者が集まる。当時、修士課程の論文が出版されたということでこの学会(ニュージーランド、オークランド)に参加したのだが、周囲のレベルの高さ(あるいは高そうに見えること)に圧倒され、自分がここにいていいものか、とさえ思ってしまった。基調講演はさることながら、学生発表賞のプレゼンも洗練されていて、まるでTEDトークのようなものが多かった。ああ、これが国際レベルの研究環境なのか!(のちに英語がある程度堪能になり、実はたいしたことがない場合も多いとわかるのだが。)  しかし、それまで英語によるコミュニケーションをまったく訓練してこなかった私は、周りが何を話しているのか全く理解できない。発表もすごそうなことはわかるのだが、「すごそう」以上のことはわからない。ポスター発表をしたのだが、ほんの数人しか聞きに来ず、来たとしても片言の英語ではまったく意味のある会話ができない。あまりにも緊張してパニックに陥った私は、"Where are you from?"という簡単な質問に対し、"I'm Japan!"(私は日本です!)と答えた記憶がある。英語論文を(マイナーなジャーナルの)紙面で発表し、ノミ程の自信を持ち始めたころだったのだが、それはあっけなく踏みつぶされ、「ああ、自分は国際的な研究の輪の中に入ることはできないのだ」と悟った。研究は論文が命といえど、結局のところ顔を合わせたコミュニケーションがものを言う。いかに自分が「世界」から取り残されているかが痛いほどわかり、打ちひしがれた記憶がいまだ鮮明に残っている。 帰国後-とりあえずトレーニング ショックを受けて帰国した私は、すぐさま英語コミュニケーションのトレーニングを始めた。当時東京大学の大学院(農学生命科学研究科)に在籍していたのだが、大学内で英語コミュニケーションの場を探すと、驚くほど機会が用意されていた。特に、東京大学工学部は留学生が多く、毎週火曜と金曜には留学生を交えたランチタイムがあった。早速その場に突っ込んでいき、話せないながらも英語による会話に慣れようと必死になった。また、週二回(各回1時間程度)では圧倒的に会話量が少ないので、同時にSkype英会話(比較的安価;当時は毎日30分で月5000円だった)を通じてトレーニングするようにするのと、「レッツスピーク」という英語のディクテーション(音声書き取りのトレーニング)をできるだけ毎日するようにした。 【中古】NHKラジオ英会話レッツスピ-クベストセレクション NHK CD book /NHK出版/岩村圭南 (単行本)価格:616円(税込、送料無料) (2019/7/29時点)楽天で購入  結果、2年後の国際学会ではある程度コミュニケーションが取れるようになり、より国際学会を楽しめるようになった。また、副産物として、このころから英語の「書く」能力も飛躍的に改善された気がする。感覚的に、英語の「変な表現」がわかるようになってきたのだ。論文を書く効率も上がったのではないかと思う。2019年現在、言語の壁はいまだに大きいと感じるが、この時の時間は確実に今に繋がっている。 立ちはだかる壁 しかし、博士課程在学中、私は自分で望んでいたほどの研究業績を上げることは叶わなかった(英語論文は主著2本)。ポスドクでは海外に!と意気込んでいたのだが、それどころか国内での任期付き研究職につくこともおぼつかない状況だった。幸い、当時交流のあった教授の先生に拾ってもらい、そのポスドク期間にある程度業績を上げて海外への道が開けたのだが、その道のりも平坦ではなかったように思う。次のエントリーでは、海外ポスドクポジションへの応募の過程を書いていきたいと思う。