海外で研究職を探す:ポスドク格闘編

Summary

海外学振を獲得し、晴れて海外で研究する機会が得られた。2017年4月、トランクひとつでミネソタに乗り込む。しかし正直なところ、過剰に期待していたためか、はたまた自分が機会を活かし切れていなったためか、やや生煮え感の残る海外ポスドクだったような気がする。ここでは、アメリカのミネソタ大学という一事例ではあるが、メリット、デメリットについてまとめてみたい。

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メリット

ネットワークが広がる

一番のメリットは、研究のネットワークが大きく広がることだろう。日本という極東の島国は、少なくとも私の研究分野では「世界の中心」とはいいがたく、あらゆる面で隔離されている事実を目の当たりにする。ミネソタ大学のEEB(Ecology, Evolution, and Behavior)では、週一でセミナーが開催されており、これはなかなか刺激的である。また、日本ではあまり見ないが、招待講演者が来ると必ずといっていいほど1対1のミーティングの時間が設けられる。こうしていろんな人と「顔見知り」になることが、アメリカでのキャリア形成の上で非常に重要な意味を持つようだ。

全く異なる生態系

これはメリットでありデメリットでもあるのだが、海外の全く異なる生態系を見られる。これは多くの生態学者にとって非常に魅力的なことだろう。私の場合、淡水二枚貝の研究をしていたが、北アメリカは淡水二枚貝のメッカともいうべき研究フィールドである。こうしたシステムで研究をできたことは、仮に日本に戻っていたとしても大きな財産になったように思う。

興味の収斂という面白さ

アメリカと日本という全く異なる環境で育ってきたにも関わらず、同じ対象種・研究トピックに興味を持ち、ある一つのゴールに向かってともに研究を進めるというのは非常に刺激的な体験だった。

少数派体験

これはデメリットとして挙げた言語や文化の違いとも関連するが、「少数派体験」ということに焦点を当てるのであればメリットだろうと考えている。アメリカに来るまで、日本がいかに「単民族国家」であるかを理解できていなかった。要するに、単民族であるがゆえに、少数派外国人に対する無意識の差別を認知できていなかったのである。アメリカに来て、「お前らが当然と思っていることは俺にとっては当然じゃないんだよ!」なんて思うこともしばしばあったが、日本にいたころの自分を思い返すと、それはそのまま自分が留学生にしてきたことと同じだったように思う。日本人は、アメリカ人のいうMinority(たぶんOverrepresented Minorityとかかな)とは違う位置づけなのだが、それでもなお自分の過去を振り返り、後悔するには十分すぎる経験が得られる。

デメリット

言語の壁

当然ながら、英語の壁には苦労する。飲み会にいっても会話に入れない、研究の話がうまく伝わらない、電話が怖い、などなど挙げればきりがない。経験上、アメリカのドラマを字幕なしですんなり理解できれば全く問題ないと思う。ちなみに私は、在米二年+でまだここには至っていない。ちなみに筆者の現在の英語レベルは(ディズニー;8-9割わかる、普通のドラマ;5-7割わかる、法律関係のドラマ;死亡)

文化の壁

言語の壁と同等の壁といえるかもしれないのが「文化の壁」である。一番しんどいと感じるのは、「ナイスガイであれ!」的な無言のプレッシャー。アメリカ人はみな、快活で陽気みたいな印象があるかもしれない(How's it going?から始まる朝の爽やかな会話とか)。しかし勘違いしてはいけない。あの快活さの50%は「ナイスガイであれ!」という無言のプレッシャーから来ているのだ。もし会話の中で、「こいつどうでもいいこと言ってるな」と思ったとしても、そこはにこやかに「Sounds good!」とか「Wonderful!」と返しておこう。

VISA

ナイトメア。こればかりは避けては通れない。ほかの国の事情は知らないが、アメリカのビザは非常に煩雑で、これ以上にストレスのかかる作業はない。ビザ関連の作業をするたびに、母国に住むことのありがたみを噛み締めることになるだろう。

地の利のなさ

これは私の分野特有の話かもしれないが、アメリカでのフィールド調査は想像以上に「前準備」が大変である。例えば、魚の調査をするとしよう。IACUC(Institutional Animal Care and Use Committee)をパスしなければいけない、フィールド調査をする場所の許可申請が面倒(特に私有地の場合)など。いったん慣れれば大丈夫なのだが、こうした手続きのLanguageにも慣れていない分時間がかかる。そもそも誰に聞けばいいのかわからないことも多い。

社会保障

当然ながら、社会保障のクオリティは国によって大きく異なる。アメリカに関していえば、「糞」である。そもそもプランが複雑すぎてどうなっているのかよくわからない、歯医者高すぎ、などなど、挙げればきりがない。本当に海外出るかどうか、こうした社会保障の側面を考えておくことはかなり大事だといまさらながら痛感している。

海外ポスドクをもっと楽しむために

日本人コミュニティーに「適度」に参加

逆説的に聞こえるかもしれないが、日本人コミュニティーに適度参加するのが良い。というのも、アメリカ滞在の長い大先輩方もおおく、そういった方々のサバイバル奮闘記はとても参考になる。私は一年目、なにか気取っていたのか「アメリカに来たんだ、アメリカ人と仲良くしなきゃいけない!」とか勝手に思い込み、なんかいろいろうまくいかなかったように思う。また、VISA関連の情報共有など、同じ日本人同士でしか共有できない問題もあるので、こういったコミュニティーに適度に出入りするのは必要であると思う。しかし、けっしてつるむ必要はない。

いいルームメイトを探そう

英語のトレーニングもかねて、日本人以外のだれかとルームシェアをするのが良いと思う。私はスペイン人とルームシェアしていたが、ポスドク期間を通じて彼が一番の友人だったように思う(私から見て、ということではあるが)。彼はとても気さくな人間だったので、彼を通じてアメリカ人や他の国の人とも仲良くなるきっかけが得られた。

わからないときは「わからん」という

ミーティングや会話の中で、「わからないのにわかったふり」をするのはとてもよくない。これはいまでもやってしまいがちなのだが、わからないときはきちんと聞き直すようにしよう(もちろん限度はあるのだが、その塩梅が難しい)。聞こうとする意思があることを示すことも大事なのである。

備えあれば憂いなし

言語、文化、不文律、ビザなどなど、とにかく事前に知っておくに越したことはない。特に言語の部分は時間がかかるので、もし遠い将来であったとしても海外に出たいという意思があるのならば、今すぐにでもトレーニングを始めたほうがいい。毎日少しずつでも進めることで、将来は大きく変わるような気がする。

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