海外で研究をするということについて

日本学術振興会の海外特別研究員制度を利用して、アメリカのミネソタ大学にて研究し始めてから1年半が過ぎました。予算の終わりも見え始め、次のポストを決めないといけない時期です。そこで、今までに感じた海外研究のメリット・デメリットをまとめておこうと思います(ただし、私の意見はあくまで派遣先であるミネソタ大学を見ただけですので、他の大学ではまた違ったものが見えてくるかもしれません)。

メリット

世界的に著名な人の話を腐るほど聞ける

これはどれほど一般的かわかりませんが、私の派遣先であるミネソタ大学では毎週外部(ときに内部)から演者を招くセミナーシリーズがあります。このシリーズにはだれでも名前を聞いたことのあるような大御所から、飛ぶ鳥を落とす勢いの若手研究者までさまざまです。こうした世界レベルの研究の話に常日頃から触れられるのは大きなメリットです。

コネクションが広がる

海外の人とのコネクションが広がるというのも大きなメリットだと感じます。やはり島国日本というのは海外から断絶されており、海外にくると如何に閉鎖的な環境のなかで研究をしているかがわかります。アメリカ(おそらく欧州も)も国内のつながりのほうが強いのはそうなのですが、日本のそれと比べると国際的な影響力が月とスッポンです(そもそも科学者の数が違うので)。やはり横のつながりというのはとても大事で、査読するときにも「顔が分かる人の論文」と「全く顔が分からない人の論文」を読むのとではだいぶ印象が違う気がします。科学の質が本質であることはもちろんなのですが、「RejectかRevisionか」の瀬戸際に立った時、それまで如何に「世界に向けて」顔を売ってきたかが結果を分かつこともあると思います(特にScience, Nature, PNAS)。

組織的に動く

他に学んだ点としては、組織としての合理性を常に考えている、という点です。日本では一人で研究をがりがり進めているという感じですが、アメリカではポスドク・ドクターの学生にも大体Undergraduateがついており(雇用)雑用をやってくれます(サンプル処理など)。Undergraduateとしてもこうした経験がないと大学院に入る際のEssayなどを書くのに困るそうで、毎夏募集をかけるとがんがん応募があるようです(雇用先の研究室のボスが推薦書も書いてくれる;大きな問題がなければ)。なので、需要と供給が一致していて、システムとしてうまく機能しているように思います。日本の個人プレーに依拠するスタイルも好きなのですが、こうした組織的なやり方のいいところを積極的に取り入れていくべきなんだろうなぁと思います(欠点は後述)。

デメリット

暮らしにくい

発展した国であるアメリカでさえ、自分のなれた生活から離れるというのがこれほどストレスフルとは思いませんでした。当たり前のことが当たり前でなくなるので、なにもできない小学生に戻った気分になります。

フィールドデータがとりにくい

実証屋は特に強く感じると思います。地理感覚、調査許可の取り方など、すべてが違うのでほんとに面倒です。特に、アメリカで絶滅危惧種を扱う場合、絶望的に手間がかかります。私の場合、結局州政府からいただいた広域データをベースに補助的な実験をするという形で研究を進め、何とか形にしました。

英語の壁はおおきい

それなりに練習し、国際学会程度のコミュニケーションでは問題ないレベルで渡米したのですが、それでもしんどいです。飲み会の会話にまったく入っていけず、これといって「友達」といえる友達ができません。私の場合、最初の一年ルームシェアしていたスペイン人とその周りの人々、ラボで一緒に研究を進めた数名、アパートの隣人(同じ大学)くらいです。もっとソーシャルな人間でありたい。

オリジナリティをもった人間は実は多くない

実はこれが一番ショッキングでした。アメリカというと「みんなすげー優秀;オリジナリティーばりばり」みたいなイメージを勝手に持っていましたが、実際のところ誰かのアイデアの二番煎じが多くてその点はがっかりです。院生も雇われる形でプロジェクトに従事することが多いのでそうならざるを得ないところもあるのですが、日本のほうが学生個人の味が出てることが多いなぁと感じます。ただ、アメリカではビッグプロジェクトをバックボーンにした学生研究が多いので、本人にそれほど力があるように見えずともホエーといいたくなるような雑誌に論文が載ってたりします。こういうのを見ると、あー、科学の本質ってなんなんだろう、、、と思います。

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