地球上には様々な元素があり、その性質を決めるのは陽子数です。しかし、同じ元素でも(陽子数が同じ)、中性子数が異なるために性質は同じくしながら質量の異なる「安定同位体」が存在します。混合モデルは、安定同位体の比が捕食を通じて濃縮される特性を利用し、捕食者に対する餌生物の相対的貢献度を推定する手法です。炭素(C)や窒素(N)の安定同位体比がもっとも一般的で、それぞれの濃縮係数(栄養段階が一つ上がる際の安定同位体比の濃縮の程度)についての情報が充実しています。
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古典的な混合モデル(IsoSourceなど)では平均値しか扱われてこなかったため、種内の安定同位体比のばらつきや濃縮係数の不確実性は無視されてきました。しかし最近では、これらの不確実性を明示的に取り入れたベイズ混合モデルが一般的になっています(SIARなど)。SIARに代表されるベイズ推定を利用した混合モデルでは、以下の点が古典的な混合モデルと異なります。
- 種内(あるいは任意に設定した栄養ノード内)の安定同位体比のばらつきを考慮
- 濃縮係数を確率変数とすることで、安定同位体比の濃縮プロセスの不確実性を考慮
SIARはRで実装されており、だれでも簡単に利用できるようになっています。実装の手順は以下の通りです(詳しい解説はSIARのマニュアルを参照)。
#1 パッケージインストール install.packages("siar") library(siar) #2 消費者のデータ >consumer #should be matrix d15N d13C 1 2.765054 -24.72063 2 9.857108 -24.22871 3 3.562164 -25.20802 4 7.623977 -23.86547 5 2.181553 -22.99689 #3 エサ生物のデータ >prey Source mean_d15N sd_d15N mean_d13C sd_d13C 1 detritus 2.23 2.565637 -25.22 0.932000 2 plankton 0.13 3.711336 -22.33 3.461702 3 shrimp 4.43 3.930261 -23.34 2.922652 #4 濃縮係数のデータ >tef Source mean_d15N sd_d15N mean_d13C sd_d13C 1 detritus 3.54 0.74 1.63 0.63 2 plankton 3.54 0.74 1.63 0.63 3 shrimp 3.54 0.74 1.63 0.63 #5 混合モデルの実行 result <- siarmcmcdirichletv4(consumer,prey,tef,concdep=0, iterations = 500000, burnin = 50000) #6 推定結果の表示 Summary information for the output file ... Low 95% hdr High 95% hdr mode mean detritus 0.1470012 0.9550798 0.43382742 0.5338503 plankton 0.0000000 0.5090717 0.03679839 0.2203550 shrimp 0.0000000 0.5362734 0.04320550 0.2457947 SD1 0.0000000 7.2432659 2.25476445 3.1661398 SD2 0.0000000 4.6901279 1.14716487 1.8523370
おまけ:グラフの表示
siarproportionbygroupplot(model1)